日記/20220318

「この辺がざわざわしやがるな」と隣の席に座る社員が胸に手を置くのを横目にみて、聞こえないくらいの音量で「そうですねー」と口の中でつぶやいたのが数日前、その瞬間にざわざわが感染したらしい。朝起きてもざわざわ、高めのパンを買ってもざわざわ、保険を契約するときも、半年ぶりのLINEを送るときも、ずっと心が細かく震えている。落ちつかないがまるきり悪いことでもない。こういうときはいつもより少し目と耳がよく働くので。昨日川沿いを歩いていたとき、三つ並んだベンチに一人ずつ人が座っていて、全員ばらばらの管楽器を演奏していた。知り合いどうしかも知れないし、そうじゃなかったらもっといい。

今日は午前中のシフトしか入れないで、午後から新幹線で帰省するか、それが無理なら眼科で視力検査をしてもらうつもりだったが、どっちも無理で普通に帰宅した。朝、腐った大量の果物をゴミに出したとき、手に持った袋の重量がすごく死体っぽくて、ざわざわが少し悪い方に転んだのを感じた。あるいは普通に寒くて萎えただけかもしれない。電気を消した部屋で日が落ちるまで横になっていた。

Tverでカルテットの配信をやっていたから、今配信されている六話まで一度に全部みた。TV放送当時から数えて多分五周目。円盤はもっていないけど、無料でみられるチャンスは逃さず享受してきた。忘れっぽいから毎回新鮮な気持ちでみている。夜に明るいコンビニの前で司がすずめに差し出す二つのアイス、すずめがロックンロールナッツを選ぶことがすずめより先にわかって、そういやこのドラマみたことあったな、と気づき、高三のとき私よりもカルテットが好きだった友達のことなど思い出す。思い出せて安心する。

二〇時前にやっと電気をつけて飯を食う。ニラ玉と舞茸のから揚げ。二カ月先延ばしにしていたメールの下書きをようやく書いて、今は友達が資料をめくる音とか唸り声をBGMに、これを書いている。ざわざわっていうか、そわそわっていうか、みぞみぞも多分違って、体の全パーツが定位置を忘れてしまった、みたいな。