第17投函

いつになるかはわかりませんが、もしも私が死んだとして、誰かが私の人生の一部分を指して「**で暮らした三年間は、あの人の人生の中でも最良の時期であった」などと言っているのを耳にしたら、どうか気づかないふりをして、眉一つ動かさないで、そのまま通り過ぎてください。季節がもしも秋だったなら、どんぐりか何かを8個拾って、お墓参りに来て下さい。私はそれらひとつひとつの太り方や色つやや虫食いなどを恥ずかしげもなくながめまわして、名前をつけて愛撫します。最良だとか最悪だとか、切り分けられた私の時間を合わせた手の中でとろかして、全部どんぐりだったことにしてしまいます。そういうことを考えました。

 

令和2年6月30日